TERUKO METHOD

#01 坂東眞理子さん

昭和女子大学 理事長・総長

これからの女性は、人生100年時代をどう生きるべきか?

第一回目はベストセラー本「女性の品格」の著書でおなじみ、現在は昭和女子大学の理事長として活躍中の坂東眞理子さんをゲストに迎え、女性のキャリアについて対談。


文=ナイキミキ、撮影=永田忠彦、ヘアメイク=山口童子(美・ファイン研究所)

坂東:『ライフシフト』(※1)という本が話題になっていますけれど、2007年生まれの女性は107才まで生きるそうです。女性の場合は、50才で子供が手を離れたら、もうやることが無くなったというイメージですが、成熟した女性が残りの人生をどう生きていくか?を考えることは、今後の大きな課題です。ライフシフトというのは、女性の問題。
小林:私は今82才ですが、56才で起業しました。それこそ50才を過ぎたら、もう今更何をやってもダメと諦めてしまう人が多いですね。仕事をしていなくても、育児や家事だって立派なキャリア。それをきちっと楽しんで、こなしてきたなら、それをそのまま載せて次のステージに行けばいいのです。
坂東:今までの日本人の価値は、その人がどれだけ稼げるかに左右されていました。家庭にいる人たちは、稼いでいないから、何もできないと卑下していた。本当は素晴らしいことを、たくさん生み出しているのよ。自分でも、そう自信を持つことが必要だし、そういう女性を周囲も尊敬しないといけない。人は評価されないと、自分は何者でもないと思ってしまう。また、価値の多様性、お金の他にも追求することがあるのだ、と女性自身にわかって欲しい。
小林:女性は、家族を支える力を持っているのです。『実はあなたは、こんなことが出来るのよ』『すごいのよ』と周りが認めて褒めてあげることも必要。
坂東:日本青年研究所の調査で高校生意識調査というのがあるのですが、それを見ると自分自身への評価が、日本の高校生の意識が一番低い。この自信のなさで、グローバル社会を生き抜けるのか、と心配になってしまいます。
小林:日本では、自信のないふりをするほうが愛されるのよ。(笑)
坂東:これは私の仮説ですけれど。男性は些細なことで傷つきやすい。(笑)自信がないから、男性の自尊心を傷つけない人が好かれるのです。自分より収入が高いとか、社会的に成功している女性を疎ましがったりしますね。
小林:キャリアを積んできた女性からみたら『ちょっと!』って思いますよね。日本は独特。まず男性が意識を変えないといけません。

自分のことを可愛がることが大事ですよ

小林:50才を過ぎたら、個性です。目鼻立ちがどうとか、美人ということではなく…。自分の魅力をどう活かしていくか。その人にふさわしい、自信に満ちた外見を作ることが必要なのです。外見が伴ってこそ、心も定まってくる。
坂東:確かにそうですね。初めて会う人の中身までは本当にわかりません。99%外見で判断してしまいます。第一印象で判断して、好ましい人の話なら説得力があり、よく聞こえたりもします。そこで、次の話を聞こうという意識が生じる。自分は外見で人を判断してはいけないと、戒めているのですが、やっぱり見た目ファーストであることは否めない。
小林:ヘアメイクや服装などの身だしなみを作ると、内側もピシッとするものです。例えば、朝出かけにヘアスタイルが決まらないと、その日一日憂鬱になって「自分ダメだな〜」と思う時ってありますよね。そういう心理状態と同じ。
坂東:人生長く生きていると、見た目も、追求したいことも、自分の内面も変化していきます。私自身もその時々に応じて、ふさわしい服装やメイクが変わってきたように思いますね。外見というのは、自分のポジションやどんな社会的な役割を担いたいのかを表現する要素。新しいステージには、新しい外見が必要なのかもしれませんね。
小林:いくつになっても、夢は外見の力を伴わせれば早く実現するのです。実際に私の元で『ハッピーメイク』(※2)を勉強した人の中にも、そういう人が大勢いて。50才から勉強を始めた人が、今80才になっても生き生きしている。コツコツと、一生懸命地味に共感を訴えても、外見にそのイメージが表現できていないと。ただ、それは欠点をどうにかする、という虫眼鏡的な小さな発想ではなく、良いところを発見してどんどん伸ばしていけば、欠点など消えてなくなるという考え方。

小林:美容というと、ヘアメイクしたり、髪を切ったり…というイメージですよね。私がやっている美容は、人を抱きしめるようなこと。実際に私の元を訪れる人は更年期の人などがとても多く、医者に行ってもたらい回しにされた上、自分に自信がなくなって心身共にズタズタになってやってくる。そこで『大丈夫よ』と言って抱きしめてあげる。その後、頬紅をつけたり、ホットタオルでちょっと蒸したり…『赤ちゃんの肌に触れるのと同じように優しく、明日から自分でやってごらんなさい』と、やり方を教えながら。実はそういうことが美容の始まり。自分のことを可愛がってもいいのね、という気持ちにさせること。それが気づきになって、毎日続けていると、みるみると輝いて自信が溢れてきて。自身に手間をかけることが、内面に寄り添うことにもなるのです。
坂東:美容を通じて、どう生きたらいいか、相談に乗ってもらえるのですね。女性は真面目だから、ついつい仕事、家庭、育児とのめり込んでしまいます。忙しいと『自分は必要とされている』『ちゃんと仕事をしている』という実感もある。それが一段落してふと立ち止まった時、次、何をしていけば良いのか?不安になってしまうことが多いと思います。小林さんは、そういう人たちに手を差し伸べ、救っているのですね。

マインドセットを変えないと生きづらい

坂東:現在は、男性が非正規の仕事にしかつけない→だから結婚できない→少子化が進むと言われています。年収300万円代の男性が、同じほど稼ぐ女性とシェアすれば、本当はちゃんと生活ができるはず。夫だけで妻子を養わなければならない、という思い込みはどこからきたのでしょうか。自分もサポーターになって、奥さんにもしっかり稼いでもらう。そんな選択肢もあるのです。男性がそれを受け入れるようになるためには、どうすれば良いのか?発想の狭さも問題ではないかと思いますね。
小林:従来からの古い価値観。親は子に『昔からのレールを外れたら大変だよ』とは言えるけれど、『レールを外れてもいいのよ』とは言えませんね。
坂東:こういうロールモデルがあるよ、と親も先生も教えられません。
小林:知的好奇心が旺盛で、例えそのことで失敗したとしても、次の世界で生きるための努力を続けさせればいいのです。

坂東:現在の小学生が大学を出て、卒業した時に就く後の職業は65%が現在、存在しないものだそうです。例えば、ひと昔前にIT業界がなかったように。どんどん新しい仕事、職種が出てくる。今、存在しない仕事に就くためには、おもしろがって取り組む知的好奇心や想像力を養っていかないといけない。そして、失敗を恐れず、努力を厭わない能力。それを子供の頃から養っていく必要があります。
小林:人生100年時代を生き抜くためには、マインドセットを変えることが必要ですね。
坂東:今までは、男性が力を持ち、女性はできるだけ多く与えてもらうのが幸せと考えられていました。主婦は、与えられたお金を無駄使いせず、支出を切り詰めていくことが、マネージメント力の最大の見せ所。もちろん、それは大切なことだと思いますが、それだけだと縮こまっていきます。自分を縛って、可能性を狭めている気がします。
小林:スイッチの切り替え。日常から少し離れて自分を考えてみるといいと思います。私も40代の頃は、色々と悩んだの。仕事と子育てが大変で、現実から逃れるために思い切って列車でアメリカ縦断の旅をしました。たまたま、同席した人から様々な質問を受けて、それに答えるうちに、バラバラだった答えがまとまってきて。そして、言葉によって構築したことが、すべて現実になったのです。
坂東:それは小林さんにとってのエクスプローラー(探求者)の時期だったのですね。もやもや思っていることを言葉にするのは、とても大切。今のところでなすべきことが無くなったら、新しいステージに踏み出すタイミング。そんな時は1日くらい自分の時間を確保して、家庭や職場を離れたところで、自分が具体的にどう生きていくのか、将来をどう作っていくのか?などを、考えてみると良いと思います。人生の目標を、年齢ごとに考えてみるのもおすすめです。例えば、私だったら、95才で船で世界一周するとか。(笑)

小林:50才が折り返しで、100才まで生きる。この50年は、たくさんの経験を積んでいるから、無駄のない時間を生きることができるわけです。お金を稼ぐこと以外にも、価値観はあって。組織に属さなくても、できることはたくさんありますね。喜んでもらうことに生きがいを感じたり…。与えることで、人生がより豊かに広がることもあります。
坂東:与えるから、お返しが帰ってくるのです。人から感謝されるということは、続ける上での大きなモチベーションになります。
小林:まだやってないこと、やりたかったこと…。40才や50才を過ぎても、どんどんチャレンジすればいいのです。私は82才、これからも生涯現役です!

坂東眞理子(ばんどうまりこ) 昭和女子大学理事長・総長
1969年総理府入省。多くの女性政策に関わり、尽力した。1978年に日本初の「婦人白書」の執筆を担当した。内閣府男女共同参画局長などを経て、2003年に退官。その後、昭和女子大学学長に就任、2016年より現職。2006年に執筆した「女性の品格」(PHP新書刊)は、一大ブームとなり現在まで300万部を超えるベストセラーとなっている。
坂東眞理子のオンとオフ https://content.swu.ac.jp/bandomariko/

注釈

  • 1 『ライフシフト 100年時代の人生戦略』リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット著(東洋経済新報社)
  • 2 小林照子が提唱する『ハッピーメイク』は、自身の魅力や能力、なりたい自分のイメージを外見に表現するという独自メソッド。美・ファイン研究所(http://be-fine.co.jp)詳しくは印象分析(http://www.be-fine.net/)を参照。
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